『立ち食いそば完全制覇・中野篇』第１３回・冷やしコロッケそば

なんとなく、店員Ａの態度が柔らかくなって来たように思う。これは度々通ってわたくしが彼を理解したのか、それとも彼がわたくしを「良く見る顔」と認識したのか……。
本日はつい「冷やしコロッケ！」とコールしてしまい、当然店員Ａに
「そば？」と訊かれ、慌てて
「はい、そばで」と答えたわたくしですが、その「そば？」という言葉のニュアンスに、
――そばなのかうどんなのかはっきりしろ。
ではなくて、
――いつものとおり、そばでいいのか？
だったように思うのです。
ただの妄想ですか。そうですか。

さて、冷やしコロッケそば。
これもわたくしにとって未知の、謎のメニューのひとつです。
このメニューの最大の謎は、ただ単に冷やしそばの上にコロッケがのっかっているだけ、ということです。
何が謎かって？
わかめは除外しておいて、コロッケに近しいメニューを説明すればわかって貰えるだろうか。
天ぷら、ちくわ天だ。これらはコロッケと同様、温メニューの時は、そばの上に乗せられたのち、熱いつゆを上からかけられる。
それに対して冷やしの場合、これら天ぷら、ちくわ天はあらかじめ温つゆにひたされ、充分につゆ味を染み込まされる。そうしてる間に店員は冷やしたそばに冷つゆをかけ、最後に温つゆから上げられた天ぷら、ちくわ天をトッピングするのだ。
それなのに、冷やしコロッケそばは、単に後のせ。
コロッケの下面は冷たいつゆがゆっくり染み、上面はカリっとした衣のままなのだ。
謎。
わたくしはまず一口コロッケを齧ってみた。
上はカリッ、下はふにゃッ。謎の食感。これは……つゆにひたしてぐずぐずにしてはいけないような気がする。
そこでわたくしが取った謎の行動。
――ソースをかけてみた。
下面はしょうゆ味ぐずッ、上面はソース味カリッ。これが……
なぜか美味い。
抜群の相性とは言えまい。だが、謎の相性。
コロッケそばの時のようにもろもろッと崩すことはしなかった。そばを啜り、合間にコロッケを齧った。
そばを主食に、不思議なおかず。
今度コロッケを食べる時はソースと醤油のダブルソース（？）を試してみよう。
そんなふうにゲテもの食いの虫が疼くのを抑えつつ、帰宅。

ほんと、謎。

・かけそば
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本企画は、東海林さだお『偉いぞ！立ち食いそば』から思い立ったリスペクト企画、縮小再生産です。