土用丑

流行り廃りに乗るのが苦手なわたくしでも、やはり食欲をそそられれば抗いきれない魅力。それは何を置いても「香り」が強いものですよ。
強いって言っても「強烈」という意味ではござぁませんで、こう何と言うか、その匂いを嗅ぐと無条件に反応してしまういわばパブロフの犬的魅力を持つという意味でして、肉を焼く匂い、魚を焼く匂い、玉ねぎ炒めの匂い、カレーの匂い、各個人によって好き好きあるでしょが、大部分の方に納得してもらえるであろうその第一位は、ウナギにおいて他ありません。
本日はどこのスーパーでもコンビニでもウナギ弁当を出し、蒲焼を売り、もちろん焼いて煙をもうもう立てているところもある本日は、土用の丑の日でございます。
誰が江戸の世のエレキテル野郎がテキトーに作ったウナギ用販売コピーに乗ってやるかよ、とブームに乗らないフリは、一度あの煙の匂いを嗅いだらば、到底出来ようもない芸当でございと。
つまり、マスコミに踊らされて買ってきました、ウナギの蒲焼。
今年は例年より高いんですってね、奥さん。去年ウナギの稚魚があんまり獲れなくて、養殖ウナギが少ないんですってよ。あらまぁ、養殖なのに? なんて馬鹿な話をしてる場合か!
ほらメシだ、メシを炊け!
銀シャリだ!
昼間はそばだったから、今晩は銀シャリウナギで豪勢に行くぞ! 父さん奮発しちゃうぞぉっと! お父さんやったね、今夜もホームランだ!


……ま、例年より高い中でも一番安かった中国産の長焼きを買ってきましてね。これでウナ丼作りますよ。
あっため方は昔センセに教わりましてね、電子レンジや網焼きなんかより、安物ウナギでもふっくらと、そこそこ美味しく頂けるあっため方ですよ。
フライパンにウナギを敷きまして、当然皮を下にしてくださいね。
そこに料理酒をダバッとかけまして、えぇ、そりゃあもうそんな酒に浸けたらもったいない……と思うくらい、つまり1カップくらいダバーッとウナギにかけまして、フライパンにフタをして、ぐつぐつ煮るんですわ。
そしてる間に丼にゴハンを盛るでしょ?
ウナギに付いてきたタレを半分、ゴハンの上にまんべんなくかけるでしょ?
山椒もパックの半分くらいをゴハンの上にかけるんですよ、そんでフライパン見て、酒がなくなるかなーどうかなーって、いい頃合いでウナギを上げて、ゴハンの上にドーン!
残ってた半分のタレと山椒をダバーーッ、バラバラッとかけまして、うな丼の完成でございますよ。
大量の酒で酒蒸しされたウナギは、どんな安モンでもふわーッほくーッとなること請け合いでございますよ。
教えてくれたセンセ、どうもありがとさんです。
電子レンジのあっためは味気ないよ、ほんと。ま、わたくし電子レンジ持ってないけどね。