『バス男』DVD


映画。
タイトルについての突っ込みは、「バス男」で検索するとしこたまヒットするので、他に任せるとして。
久々に、肩の力を抜いてヘビーローテで視聴したい、癒し系コメディ映画。
ま、世間一般の癒し系と同じように思ってもらっては困るんですけど。
何のとりえもない主人公、ナポレオン・ダイナマイトの何のとりえもない日常。
いじめや友情や恋など、ハリウッド映画的にいくらでも膨らませようのある要素が散りばめられているにも関わらず、それらを面白いくらいスカして、決定的な解決もないまま、でもなんとなくニッコリしてしまうオチへ集約していく不思議なコメディ映画。


シャツをズボンの中に入れ、
時代錯誤な大きな眼鏡をかけ、
手入れされてないくちゃくちゃパーマ髪で、
口はいつも開いていて、当然ルックスも最悪な主人公、ナポレオン・ダイナマイトは、
そのキャラでありながら、
電車男のようにネットの中に救いを求めたりせず、
ひきこもるわけでもなく、
彼なりの行動を起こしているあたりは、アメリカ的でもあるような気もする。
いじめられても、反抗したり。
ダンスを覚えようとビデオを見て汗をかいたりする。
むしろひきこもりはナポレオンの兄貴のほうで、チャットに一日4時間費やし、パソコンの向こうのまだ見ぬ彼女をソウルメイトだと言い張ったりする。……その兄貴にも、彼女が直接会いに来る事件もあるのだが、これがまた大事件に発展することなく、しかしクスリとさせる変化が彼に現れたりもする。
話は怠惰に、地味な笑いを誘うナポレオンの日常を描き、それゆえに唐突とも思える言動やシチュエーションが現れるのだが、そんなもんかとうやむやのまま、見続けてしまう。
映画のクライマックスは、映画のクライマックスとしてはまたゆる過ぎる、ナポレオンの唯一の友人、ペドロ(無表情で、やはりモテる気配のないメキシコ人)がモテる為の起死回生として狙った生徒会長選挙なのだが、
実はこのシーンが見たくて「バス男」をレンタルしたわたくし。
このゆる地味クライマックスが、泣けるとは言わないまでも、何かハートがほっこりする良さがありますよ。


爆笑、バイオレンス、エロ。
そういうものとは無縁の地味コメディ。
濃ゆ目だけどダメなキャラの、ひたむきなポジティブさが、どうやらわたくしの琴線に触れたらしい。
そういう意味で、「癒し系」なのだ。


ちなみに原題は、まんま『ナポレオン・ダイナマイト』です。